組織による危機管理のポイント

私は、前職(JICA)で、アフガニスタンへの駐在や出張を通して紛争を体感し、そして、インドネシア駐在で関係者数百人を守るための安全管理を担当していたので、安全対策や危機管理について多少の経験値があると思います。

自分の身は自分で守る、といった個人としての安全対策ではなく、組織として関係者をどう守るかという安全管理、危機管理には、いくつかのポイントがあります。

まず、想定されるリスク(災害、犯罪、事故等)を洗い出したうえで、最悪の事態を想定し、その事態への対策を想定しておくこと。自治体においては、感染症対策から自然災害、様々なリスクがあります。リスクに関する適切な想定が無くては適切な対策も検討できません。

次に、安全管理の指揮体制を明確にし、総責任者が傷病等で欠けた際にも組織が動くようにしておくこと。例えば、トップである市長が病気で動けなくなった際には副市長、副市長も欠けた場合には総務部長、総務部長も、、、といったように、意思決定をする人の順位を付けておくことが大事です。トップやナンバー2がいなくなると右往左往するような組織ではいけません。

また、対応マニュアルを作って安心ではないこと。マニュアル作成に加えて、頭と体を動かす訓練を繰り返していくこと、マニュアルの肝の部分は頭に入れて臨機応変に動けるか自省を繰り返すこと等が大事です。「マニュアル完成=対策完了」という「罠」にはまってはいけません。マニュアルは日々磨き上げていく、という意識が必要です。

最後に、関係者に出す指示については、「●●禁止」というような指示を出すかどうかは慎重に見極める必要があること。命に直結するリスクへの対策は当然に「禁止」とすべきですが、「念のため禁止」だと切迫感がなくなり、結果として禁止行為を破る人が出る可能性があります。また、禁止というのは重たく、その行為自体が完全にできなくなるため、その重みを踏まえて判断しなくてはなりません。

例えば、インドネシアで安全管理を担当していた際、暴力的なデモが発生して関係者に対して全面的に外出禁止とすべきか、特定地域(デモ発生地域)への接近禁止とすべきか、とても迷った経験があります。全面的に禁止とするのは簡単ですが、過剰な対応となりその指示を守らない人も出る可能性がありました。また、外出禁止とすると仕事や通学にも影響が大きくなります。この時は、デモの動向を慎重に見極めたうえで、検討を重ねて「特定地域への接近禁止」と判断しました。結果として関係者に影響はなく、デモも終息してほっと安心しました。危機管理、安全管理は命を守る重たい仕事、失敗すれば相当な批判を受ける仕事だと痛感しました。

インドネシアで関係者に対する安全対策を繰り返し、コロナ発生時の国外退避等のオペレーションを経験し、安全管理のポイントを体得したと思っていました。しかし、その後、東京で全世界の安全管理を担当する部署に着任して、まだまだ奥が深くて自分は未熟であることを痛感し、日々、安全管理に関する意識と練度を高めるようにしてきました。

そして、今、地方自治体に関係する仕事をしているので、積み重ねてきた安全管理の経験値を使って貢献していきたいと考えています。

(写真は今年2月の議会で、液状化対策について議論をしている際の写真です)

 

 

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